「飲むとよく眠れる」とSNSで話題になり、一時は店頭から姿を消すほどの人気になった「ヤクルト1000」。いまも睡眠のために毎日飲んでいる、という方は少なくありません。
では、「睡眠の質を高める」という表示は、どんな研究をもとにしているのでしょうか。表示の読み方とあわせて、解説します。
ヤクルト1000は「機能性表示食品」
ヤクルト1000は、機能性表示食品として販売されている乳酸菌飲料です。1本(100ml)に「乳酸菌 シロタ株」が1000億個入っています。
パッケージには、次のような機能が表示されています。
一時的な精神的ストレスがかかる状況でのストレスをやわらげ、また、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める機能があります。(ほかに、腸内環境を改善する機能)
機能性表示食品は、事業者が自らの責任で、科学的根拠を消費者庁に届け出て機能を表示している食品です。国が商品ごとに審査して許可する「特定保健用食品(トクホ)」とは、しくみが異なります。
届け出た根拠は、消費者庁のデータベースで誰でも見ることができます。
研究では、何がわかったのか
シロタ株と睡眠について調べた代表的な研究が、2017年に発表された次の研究です。
- 対象:大学医学部の4年生。30歳以下で、持病がなく、お薬を飲んでいない、たばこを吸わない健康な人
- 状況:進級のための全国共通の試験を控え、ストレスが高まっていく時期
- 方法:試験の8週間前から試験後3週間まで、毎日100mlを飲み続ける。1日にとるシロタ株の量は、ヤクルト1000の1本分と同じ1000億個
- 比較:シロタ株入りの発酵乳を飲むグループ(48人)と、見た目・味・栄養をそろえた乳酸菌の入っていない飲み物を飲むグループ(46人)。どちらを飲んでいるかは、本人にも研究者にもわからない方法で行われました
違いが見られたこと
- 乳酸菌の入っていない飲み物のグループでは、試験が近づくにつれて、寝つくまでの時間が長くなり、深い眠りが減る傾向が見られました。
- シロタ株のグループでは、そうした変化が抑えられ、深い眠りの割合が保たれていました。眠りの深さの指標(デルタ波)は、試験が近づくにつれてむしろ2割以上高まっていました。
- 本人へのアンケートでは、シロタ株のグループで「起きたときの眠気」と「よく眠れた時間の感じ方」の2項目がよい結果になりました。
違いが見られなかったこと
- アンケートの合計点(睡眠の満足度の全体)には、グループの間で差がありませんでした。
- アンケートの「寝つき・眠りの続き方」「疲れの取れ方」などの項目にも、差はありませんでした。
- 脳波で測った実際の睡眠時間や、寝床にいる時間のうち眠っていた割合にも、差はありませんでした。
論文の著者たちも、効果は眠る時間の長さではなく、眠りの深さに関わるものだろうと考察しています。
なお、この研究はヤクルト本社の資金提供を受け、ヤクルトの研究所と徳島大学が共同で行ったものです。著者11人のうち8人はメーカーから給与を受けていました(論文には、資金提供者は研究の計画や分析には関わっていないと書かれています)。
表示の言葉を、ていねいに読んでみる
この研究からわかるのは、「ストレスで眠りが悪くなるのを、防ぐ方向に働いた」ということです。
表示の文言も、よく読むと次のように書かれています。
- 「一時的な精神的ストレスがかかる状況での」……どんな場面での機能なのか、条件が付いています
- 「睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)」……「よく眠れる」のすべてではなく、ここに書かれた2つの面についての表示です
研究の対象は、もともと健康な学生でした。長く続く不眠に悩んでいる人が飲んで、眠れるようになるかどうかを確かめた研究ではありません。
また、参加したのは30歳以下で、持病がなく、お薬を飲んでいない人に限られていました。年齢が高い方や、お薬を飲んでいる方で同じ結果になるかは、この研究からはわかりません。
ストレスが続く時期に、眠りの深さや目覚めを支える。そのくらいの距離感で取り入れるのが、表示と研究に沿った付き合い方といえます。
飲む前に知っておきたいこと
- ✅ 目安は1日1本。たくさん飲んでも、効果が高まるわけではありません
- ✅ 続けることが前提。研究では、8週間以上飲み続けていました
- ✅ カロリーと糖分。1本あたり63kcal、炭水化物14.1gです。気になる方には「糖質オフ」(43kcal)もあります
- ✅ 持病がある方・お薬を飲んでいる方は、パッケージにもあるとおり、医師や薬剤師に相談してから
また、眠れない原因が、生活リズムや寝る前の過ごし方、使っているお薬など、ほかにあることもあります。飲み物だけで解決しようとせず、原因から見直すことも大切です。
10月から、一部の商品に「免疫」の表示が追加
2026年10月5日から、「Yakult1000 糖質オフ」「Y1000」「Y1000 糖質オフ」の3商品がリニューアルされ、「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」という機能が表示に加わりました。
同じシリーズでも、商品によって表示されている機能が異なることがあります。選ぶときは、パッケージの表示を確認してみてください。
まとめ
- ヤクルト1000は、事業者の責任で根拠を届け出た機能性表示食品
- 研究では、ストレスのかかる時期に、深い眠りが保たれた。一方で、睡眠時間や睡眠の満足度の全体には差がなかった
- 表示は「一時的な精神的ストレスがかかる状況での」眠りの深さと目覚めについてのもの。不眠を治すものではない
- 目安は1日1本。続けることが前提で、カロリーや糖分にも気を配って
参考:Takada M, et al. Beneficial Microbes 2017;8(2):153-162/ヤクルト本社 商品情報「Yakult(ヤクルト)1000」/ヤクルト本社 プレスリリース(2026年8月19日)/消費者庁 機能性表示食品の届出情報(届出番号 D279)